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香りが商品化されるまでの物語。香水一雫の向こうに見えるもの



香水
 
この世にあまたある香水も元は誰かが作り上げたもの。
昔も今も名香誕生の影には物語があります。劇的な物語から生まれるものもありますが、ごく普通の開発現場はどのようになっているのでしょうか。香水が私たちの手元に届くまでにはどのような苦労があるのでしょうか。


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香水の調合を行うのは調香師と呼ばれる香りのプロフェッショナルですが、企業で香水を作る彼らは自分の好き勝手な香りを作っているわけではありません。
ではどのようにしてあの馨しい商品は生み出されているのでしょうか。
香水誕生までの流れを見てみましょう。

 

ひとつの香水が誕生するまで

会社にもよりますが、まずは香水のコンセプトが決定され、そのコンセプトに基づいて作られることが多いようです。
香水はそのブランドをイメージづける商品ですのでコンセプトは重要です。
コンセプトが決まればそれに基づいて数多くの試作品が作らます。

試作品は一般の方も含め多くの人に試され評価されます。どんな香りかはもちろん、原料となる香料の価格はピンからキリまでありますので、商品として販売時の価格を考慮した処方を考えなければなりません。
試作品の数はときとして壮大なものになる場合もあるとのことで、筆者としては一度でいいのでボツになった香りも含めてぜひ試させていただきたいと思ったりもします。

試作に試作を重ね、試行錯誤の末にようやく商品の処方が決定します。

 

愛好家が少なくない香水のボトル

商品として重要なのは香水本体だけではありません。
香水を収める容器もまた、趣向やイメージを凝らして作成されます。
多くの場合、香水本体の開発と同じように、こちらもプロのデザイナーによって考案されます。
香水のボトルは香りを視覚化したものとして、それそのものに愛好家がいるほどですので、香水本体と同じく考案作成に手は抜けません。
デザインはただ見た目だけでなく、磁石を瓶に使ったりするなど(ジャンポールゴルチェのゴルチェトゥザパワーオブ2。二本がセットで磁石が着いています。惹かれ会う二人をイメージ。)様々な工夫が施されます。

 

香水はトータルイメージが重要

他にも宣伝に起用するモデルをだれにするか、どのようなルートで販売するかなど、驚くほど多くのことが会議などで決定されます。
調香師だけでなく、ボトルデザイナーだけでもなく、営業を担当する方、品質を管理する方、香料を調達する方、様々な人の労力があって初めて香水は商品として世に出ます。

作り上げられた香水の一雫には関わった人々のこだわりや心がぎゅっと詰まっていることを想像しながら今一度、その香りを吸い込んでみましょう。
その香水の製造に関わった人々が連想でき、なんとも言えないロマンを感じませんでしょうか。

 

香料の原材料にも思いを馳せて

また、香水に使われている香料が、また命あった頃のことを私は想像したりもします。
香料には植物性由来のものも動物性由来のものもありますが、いずれもかつては命あるもの、もしくは命あるものと共にあったものでした。

ユリやヒヤシンスなどの花はもちろん、アンバーはクジラから、ムスクはジャコウジカから得ることができます。
香水になった頃にはもちろん花の形や動物の姿は見えません。
ですが想像することはできるのです。

バラが咲き乱れていた頃を想像しながらバラの香りを吸い込み、夜摘みのジャスミンのしっとりした香りを吸い込みながら、その花が摘み取られている様を思い浮かべたり、アンバーがクジラから排出されて大海原をプカリプカリと漂っているところを想像すると楽しくなって来ます。

 

香水からつける女性をイメージする

また、香料について想像を膨らませることは香水から連想される理想の女性を思い浮かべることにもつながり、引いてはそれはファッションなどにも良い影響を与えます。
纏う香水のイメージに合わせた女性になる、もしく自分自身とチョイスした香水との相性について考えるということが出来るようになるかも知れません。

スズランやユリなど白い花を使った香水を纏うなら自分も一輪の白く美しい花になった気分になりましょう。
夜に咲く、チュベローズなどやや官能的な花を使った香水ならそのイメージのオシャレをするなどしても楽しいと思います。

これらの行為はある意味で「分析」と言えるのかも知れません。
その香水を分解し、噛み砕くように調べているとも言えます。
そう考えるとなんだか不思議な行為ですが、その香水を理解するという意味でとても重要な行為だと私は考えます。

 

香水の向こうに別の光景が見えてくる

ただ単に良い香りだから、好きな香りだから、他人からの受けがいいからという理由で選ぶよりももっと深いところまで考えることによって、その香水はあなたにとっての究極の一本となります。(もちろん、前提条件として、良い香りで自分の好みで他者へのマナーが配慮されていなければいけませんが)

お気に入りの香水があるなら、ぜひ、その香水が作り上げられる瞬間のことや原料となった花々や樹木や動物たちに思いを馳せてみてください。
きっと、その香水のいままでとは少し違った一面を知ることができるでしょう。
たとえたった一本の香水でもじっくり向き合うとこんなにも奥深いものだと感じるのではないかと思います。

一雫の香水の向こうにある光景を思い浮かべながら、その芳香を心ゆくまで楽しみましょう。

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