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麝香をまとったクレオパトラは香りの女王~香水とノート



女王クレオパトラのお話

ジャンプスーツ
 
クレオパトラは、古代エジプトのプトレマイオス朝の最後の統治者でした。
純粋なエジプト人ではなく、ギリシャ系で、マケドニアとイランの血も入っていました。つまり、混血で、彫りの深い顔立ちと、豊艶な体形をしていたのです。
また、王家の者として、高度の教育を受けて育ち、数カ国語を話しました。
才色兼備の、最高の女性でありました。


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天性の容姿に加えて、クレオパトラは、化粧の名人でもあったのです。
いちばん気を遣ったのがアイシャドウです。コールという黒い顔料で眼のふちを黒く塗っていました。これで、顔の白さが引き立ちます。
手の爪、足の爪には、指甲花を使って赤くマニキュアをしました。

そして、香りです。
クレオパトラは、毎日、薔薇の香水の風呂へ入っていました。
入浴後は、麝香を、体のすみずみまで塗り込めたのです。
こうして、最高の体臭を作り上げたのでした。

ちなみに、クレオパトラの住んでいたアレキサンドリアは、当時、世界最大の貿易港でした。
遠くヒマラヤの山麓からも、薔薇や麝香がもたらされていたのです。

クレオパトラは、プトレマイオス朝の女王です。つまり、政治の最高指導者。
その頃、北の方でローマが勢力を伸ばしていました。このままでは、エジプトも侵略されてしまう。
こういうことで、クレオパトラは、ローマの指導者であるシーザーに近づいたのです。政略的な作戦です。
しかし、政略は、すぐに性愛へと変わりました。
シーザーは、男性としても、超一流の人物です。そのシーザーから見ても、クレオパトラは超一流の女性。
まあ、自然の成り行きでしょうね。
そのシーザーが暗殺されてしまいました。
後継者はアントニウス。クレオパトラは、アントニウスに近づきました。
アントニウスも、クレオパトラの美貌と魅惑的な匂いに、あっというまに陥落したのです。

しかし、不幸は続きます。
アントニウスは、ライバルのオクタヴィアヌスに破れました。
そして、クレオパトラはオクタヴィアヌスに近づきました。
でも、オクタヴィアヌスにクレオパトラの魅力は通じませんでした。そして、彼女は、自殺したのです。
なぜ、オクタヴィアヌスは、クレオパトラの魅力を避けられたのでしょうか。
彼は、極度の近眼で、花粉症だったということです。

 

麝香のお話

麝香は、香料の中の最高峰と言っても、過言ではないと思います。

麝香は、ヒマラヤ山脈のシッキムからギルギッド、そして四川、雲南の高原地帯に生息する麝香鹿の雄の生殖腺分泌体です。
麝香鹿の雌は、麝香を嗅ぐと性的興奮をして、発情し、陶酔します。つまりは、雄が雌を誘引するフェロモンなのです。
もちろん、鹿ばかりではありません。人間も、同じように興奮、陶酔します。

麝香鹿の雄の生殖器に付いている袋状の香嚢を取り出し、乾燥させると、粒状になります。その中に、1%から2%ほど含まれているのが麝香なのです。
非常に少量しか採取できない、貴重なものであることが分かると思います。

では、これを化学的に作り出せないか、と一部の化学者は考えました。
最初は、一部の変人化学者だけが興味を持ったのです。
1906年に、ドイツの化学者のワルバウムが、麝香の粒から、香気を分離しました。
そして、1926年に、スイスの化学者のルチッカが、麝香の匂いの正体は、ムスコン(厳密に言うと、ベータ・メチルシクロペンタデカノン)と呼ばれる有機化合物であることを明らかにしました。
これが引き金になり、香料の化学は、有機化学の重要な分野へと発展したのです。
現在では、多くの天然の香りが分析されています。同時に、天然の香りに近い合成化合物の開発も進んでいます。

麝香と聞いて最初に思い浮かべるのは、幻想香水の代表であるゲランの〈ミツコ〉でしょう。あの濃厚でセクシーな香りのベースが麝香なのです。
〈ミツコ〉は、甘いフローラルなノートにフルーティ・ノートが寄り添っています。そして、麝香のアニマル・ノートで、しっかりと押さえられているのです。
〈ミツコ〉には、男性を、それも大人の一流の男性を、たちまちに虜にしてしまう魅力が秘められています。男性をして、性的興奮をさせ、発情させ、陶酔させます。その秘密が麝香です。
逆に言えば、〈ミツコ〉を身につけるのは、大人の一流の淑女でなければなりませんね。

 

香りの変化とノートのお話

香水を買う場合、ハンケチに1滴たらしてもらい、その匂いを試します。
ムエットではなくて、ハンケチなのがミソです。
売り手が用意した紙を使うのは、まだまだです。
やはり、自分専用、香水試香専用の、おろし立てのハンケチを用意しましょう。そして、1滴垂らしてもらい、その匂いを試すのです。
通常、1日くらいかけて、匂いの変化を確かめます。

この香水の香りの時間的な変化は、通常3つに分けられます。
最初に立ち上がる香りのことをトップ・ノートと言います。これは、揮発性の高い香料で構成されています。
次が、ミドル・ノート。全体の香りの中心となるノートです。
そして最後が、ラスティング・ノート。いわゆる残り香。難揮発性の香料で作られています。
香水は、これらのノートが順番に出るように、さまざまな香料をブレンドして作られています。
アニマル・ノートは、(それ自体の香りも重要ですが)これらのブレンドを、しっかりと押さえる役目をしているのです。

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