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日本人と香りを愛でる文化…和テイストの香り・香水のTPO



日本の文化
 
「香水」というと日本よりも海外諸国を連想する方の方が多いと思います。
確かに欧米に比べると日本の香水文化は一般的ではないかも知れません。
しかし、日本人が香りに無頓着だったわけではありません。この日本にも香りを愛でるという習慣はありました。


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四季豊かな風土らしく、花や雨、囲炉裏の香りなど自然の香りや身近なものの香りを愛して来たことは確かです。では香水のように人の手で作った香りについてはどうでしょうか。

 

日本における香りの歴史

もちろんそれもありました。
ただし、香水という形ではなく、香を焚く、香木を焚くなどの手段で普及して来たのです。
かつての日本人、特に貴族や上層階級の人々は衣服や持ち物に香を焚き染めていました。

よく言われるのが、香水は体臭をマスキングするために発達したという逸話です。
かつてはこの日本も今ほどに入浴を頻繁にしていませんでした。
とはいえ神道や仏教の思想から体を清めたり、入浴したりする習慣は同時代の香水を多用していた国に比べ頻繁だったと言います。(季節や地方により様々ですが)
これは先にも述べた宗教的思想の他に、急流であるために清い川や、日本中で湧き上がる温泉の影響もあります。
また、菜食主義であったことも体臭を少なくした要因であったそうです。

 

香料は平安時代にはコミュニケーションツールだった?

故に比較的身奇麗にしていた日本では香水はそれほどきつく香らせることはありませんでした。
ただし、平安時代、香りを纏うことは重要でした。源氏物語など当時の小説や文献でも貴族たちはそれぞれに趣向を凝らした香を衣服に焚き染めていたことが伺えます。
おそらく夜が今より暗い時代、恋人のいる部屋に忍んで行くときには香りが大きな役割を果たしていたのではないでしょうか。
それらは一種のコミュニケーションツールだったのではないかと思います。

 

源氏物語にも登場する香りに纏わるシーン

源氏物語に登場する「薫」はその名の通り、生またときからえもいわれぬ馨しい芳香をまとっていたと言います。
それによって女性にモテていたのですから、なるほど、当時のモテ要素の一つに確かに「香りをまとう」ということは含まれていたのでしょう。(趣味の良さや金銭的に優れているかどうかの判断基準だった可能性もありますが)

落窪物語でも主人公の姫君が恋人を待つ夜に身支度を整えるシーンがありますが、ここで姫君の侍女が彼女のために香を焚き染めています。
良い香りをまとうことは当時のオシャレではマストだったのです。

夜、恋人が自分の部屋に通ってくる。女性は身支度を整え、馨しい香りをまとって愛しい恋人の訪れを待つ。やって来た恋人もまた良い香りをまとっています。仲睦まじく過ごした後朝早く、まだ暗いうちに恋人は帰ってしまう。しかし部屋には恋人の香りがかすかに残り、また帰って行く男性も自分に移った可愛い恋人の香りを愛でる。
想像しているだけでうっとりする光景です。
平安時代の女性は男性に顔を晒すことが殆ど無かったと言われています。そして会うのは夜の暗いときとなると、芳香がとても重要だったのも頷けます。

 

日本にも独自の香りの文化がある

また、日本には香道という芸道があります。
香木を焚き、立ち上る香りを鑑賞するもので鑑賞する聞香と、香りを聞き分ける遊びである組香の二つがあります。
香りを愛でることや聞き分けることが芸事になるのですから、香水に欧米ほどの執着がないとはいえ、日本人だって十分「良い香り」に焦がれる民族なのでしょう。

 

奥ゆかしさのある和の香り

また、和の香りとして連想されるのは白檀などの香木や、梅の香りなどです。
素朴さ、といえば言い過ぎですが、派手派手しくなりすぎない。
それでいて真の強く、しとやかな香りはゴージャスなバラなどとはまた違った味わいがあります。
きつく香りすぎず、優しく香るのも和らしい奥ゆかしさを感じさせます。

ファッションに和テイストを組み込まれる方は「香り」もぜひ視野に入れてみてはいかがでしょうか。
香を焚き染めるのは流石に難しいとしても今では和をイメージした香水も多く発表されています。
液体の香水の他に、練り香水なども商品として数多くあります。

 

香水を日本的な行事でつける際の注意点

和テイストの香水を日本的な行事につけて行く場合、例えばお茶の席などでは茶の香りを越えるほどつけないように注意します。
また、着物のときに香水をつける場合、着物に直接香水をふりかけると生地を傷めてしまう場合がありますので十分注意しましょう。着物や小物に香水や香りがついた場合はアフターケアも忘れないようにしましょう。
花を鑑賞する会などのときも控えめにつけることをお勧めします。

和の香り、というとなんだか特別なもののように感じますが、元々は私たち日本人が愛した香りです。
特別な行事の他にも日常的に使うのだって素晴らしいことだと思います。
また、香は焚かなくとも持ち物と一緒にしているだけで良い香りが移りますし、衣服などに焚き染めなくても部屋で焚くだけでも楽しむことができます。
香木で作った扇子などもあり、使えば良い匂いの風に吹かれることができます。(香水を少しだけ扇子に吹きかける、という人がいます)
日本人らしさを今一度思い起こすためにも、ちょっとだけ手にとって見ることをお勧めします。

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