芳香の不思議…濃度を濃くすると驚きの悪臭に変化する2つの香料
前からやって来る化粧の濃い女性。すれ違う瞬間に鼻を突き刺すようなキツイ香水の香りがしたら……。もしくは狭い個室に頭が痛くなるぐらい濃く香水を香らせた人物と二人きりになったら……。
きっと不快になることでしょう。
場合によっては苦痛を感じることもあるかもしれません。
好みの香水であっても香り過ぎは心地よく感じることができません。
好みの香りですら悪臭になるのですから、まして嫌いな香りであった場合なら何をか言わんやです。
きつい香水はもちろん悪臭ですが、香料の中にはその濃度を上げることでとんでもないことになってしまうものがあります。
その香りとは……その名もスカトール。
この物質は濃度が薄いと馨しいジャスミンの芳香となりますが、濃度が濃いとなんと便臭になってしまうのです。
薄い濃度ではジャスミンの芳香でも…
ローズ、スズラン、リラと並び、四大フローラルの一つであるジャスミンは世界的にも非常に人気の高い香りです。
蔓性で小さな白い(黄色いこともある)可愛らしい星のような花を咲かせます。
ジャスミンは時間によって香りが変わり、明るいうちに摘んだジャスミンは華やかで一般的にはこの香りがジャスミンの香りだと認識されています。夜に摘んだものはややしとやかな香りになり、こちらの方が好きというユーザーも存在します。
今では香水には合成香料がよく使われており、天然香料は非常に高価です。
余談になりますが、よく知られているジャスミンの天然香料をふんだんに使った香水にジャン・パトゥ社の「Joy」があります。
ジャスミンの香料(ジャスミン・アブソリュート)は花の重量に対して700分の1ほどしか得ることが出来ないため、「Joy」は市販されている香水の中でも最も高価なものとなっています。
私も憧れの高級な香水ですが、焦がれたところでなかなか手に入りません。
そう考えれば合成香料が使われて行くのもいたしかたないこと。
ただしいくら低濃度のスカトールがジャスミンを香らせ、高濃度では便臭になるからと言って、便を薄めてもジャスミンの芳香にはなりません。
インドールも濃度によっては不快な匂いに
こういった香り成分は他にもあり、例えばインドールという物質も高濃度では大変不快な匂いとなりますが、濃度が薄いと花の香りとなります。
濃い濃度でこれらを嗅ぐとびっくりしてしまうのですが、実際に香水には僅かとはいえ使用されています。
良い香水を生み出すためには多くの技術が使われています。
プロの調香師は良い香りだけでなく、こういった香りも使いこなして名香を生み出しているのです。