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天才ココ・シャネルと幻想香水〈シャネル5番〉



ココ・シャネルのお話

香水
 
ガブリエル・シャネルは、20世紀初頭から、20世紀の後半まで活躍した、フランスのファッションデザイナーです。
ココは、彼女の愛称です。
最初は婦人用帽子の店を開いたのですが、その後、婦人服のデザイナーに転向し、ファッションに革命をもたらしました。


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19世紀までは、女性は、コルセットを付け、骨の入った大きなスカートを着るのが当然だったのです。
そういった窮屈な服から女性を解放し、自然な美しさのモードを創り上げたのです。
社会進出をし始めた女性にピッタリとマッチする、最新のエレガンスでした。

ガブリエル・シャネルは、モードの世界に大変革を与えた芸術家です。
交友関係にも、凄いものがあります。

イゴール・ストラヴィンスキー。
ストラヴィンスキーは、率直に、シャネルを愛しました。
シャネルは、返事をしました。
「あなたは結婚しているのよ。奥さんが知ったら……」
「妻は、私があなたを愛していることを知っています。こんな重大なこと、妻以外に話せますか」

ジャン・コクトー。
コクトーとは、奇妙な友人関係でした。
コクトーの言葉です。
「シャネルは凄い。ココは、裁判官だ。ココが君を見る。頷く。微笑む。そして、君は死刑を宣言されるんだ」

パブロ・ピカソ。
シャネルとピカソは、ほぼ同時代を生きました。
天才は天才を知る、ということでしょうね。
もちろん、交友関係がありました。どの程度の「交友」? それを詮索するのは野暮というものです。

ガブリエル・シャネルは、服装だけで女性のエレガンスが表現できる、などとは思いませんでした。
トータルデザインが必要なことは、十分に承知していました。
香水は、絶対に必要なアイテムです。
そして、〈シャネル5番〉が作られたのです。

 

名香〈シャネル5番〉

19世紀末期には、香水は、フローラル系が主流でした。
20世紀初頭になると、シプレー系、オリエンタル系が香水の中心になりました。

こういう風潮の中にあって、ガブリエル・シャネルは、「スミレの香りとかバラの香りとかではない、女性そのものの香りを創るべきだ」と考えたのです。
彼女は、このコンセプトに合う香水を、エルネスト・ボーという名の調香師に依頼しました。
エルネスト・ボーは、香水専門の化学者で、天才的な調香師でした。

ボーは、脂肪族アルデヒド類を使ったノートを使いました。これは、香水の歴史において画期的なことでした。
〈シャネル5番〉が発売された後のことですが、アルデヒド・ノートは、大流行になったのです。
それは後年の話。
ボーは、アルデヒド・ノートとともに、ジャスミンやローズなどのフローラルブーケを中心に据えました。
そして、ムスクのアニマル・ノートやウッディ・ノートが絶妙に調和しているのです。

3年の月日をかけて、ボーは10種類の試作品を完成させました。
その中から、シャネルは、5の番号が付いた香りを選んだのです。
そして、1924年の5月5日に、〈シャネル5番〉が発売されたのでした。

ちなみに、5は、ガブリエル・シャネルのラッキーナンバーでした。
第2次大戦後、一時期、彼女はスランプでした。
まあ、お金は十分にあるから、生活には困りません。
しかし、才能を持った彼女は、それで満足出来るわけがありません。
なんとか、カムバックしたい。
ガブリエル・シャネルは、友人のマレーネ・ディートリッヒに相談しました。
ディートリッヒの答え。
「なんでまた、厄介なことを始めるの」
この一言で、彼女は燃え上がり、カムバックしたのです。
そのコレクションの日が5日でした。
さらについで、ですが、ガブリエル・シャネルは8月生まれです。獅子座。
スイスにある彼女のシャネルの墓には、5個の獅子の顔が刻まれています。

 

幻想香水

香水は、花香香水と幻想香水に分けられます。

花香香水は、天然の香りを生かした香水です。
それに対して、イメージやテーマに合わせて調香された香水を幻想香水といいます。

例えば、ゲランの〈夜間飛行〉は幻想香水です。
バラという名前を聞けば、具体的に、匂いを思い出します。
しかし、夜間飛行と聞いて、具体的な匂いを思い浮かべることは、できません。
でも、満天の星が輝く夜空に……、心地よいエンジン音を響かせて……、すらりとした翼をピンと張って……、匂いのイメージは浮かびますよね。

同じゲランの〈ミツコ〉も、幻想香水といえましょう。
ミツコという名前は、光子でしょうか。美都子、それとも三津子。いや、違いますね。西洋人が、日本人に抱く、オリエンタルなミツコなのです。

こうしたイマジネーション溢れる名前に対して、〈シャネル5番〉は、さらに凄いと思いませんか。
なにしろ、5という数字です。5という数字で、匂いをイメージすることは、ちょっと不可能。完全に抽象的な世界なのです。

ガブリエル・シャネルは、テストボトル5番の香りを選びました。だから、5番と名付けたのでしょうか。
それだけではないでしょう。
完全に抽象的な世界の中に香水の香りをイメージして、ネーミングする独創性と決断力。
やはりガブリエル・ココ・シャネルは、天才であったと思います。

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