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香水の香りを分類する方法~楊貴妃・香妃とオリエンタルノート



玄宗と楊貴妃


 
楊貴妃は、玄宗皇帝の寵愛を受けた女性です。
楊貴妃は、江南の揚州で生まれましたが、先祖は胡族でした。つまり、シルクロードである西域の出身なのです。
そのため、楊貴妃は、中国女性にはまれな豊満な体形でした。
そして、多汗質であり、その汗は、かぐわしい香りを放っていたのです。
「温泉、水なめらかにして、凝脂を洗う(白居易)」なのです。


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唐の皇帝の玄宗は、優れた統治能力を持つ人でした。
その治世の繁栄は、「開元の治」と呼ばれたのです。
ところが、次第に、政治に飽きてきました。

そこに楊貴妃が登場したのです。
元々は、自分の息子の嫁でした。
しかし、彼女の美しさに幻惑してしまって、とうとう自分の后にしたのです。
玄宗は、政治をすることなく、楊貴妃を溺愛する日々を送りました。
「後宮の美女三千人、三千の寵愛、一身にあり(白居易)」ということです。

そしてとうとう、国が乱れ、反乱が起きました。
すべての元凶は楊貴妃にある、ということは、誰の目にも明らかでした。
玄宗は、泣く泣く、楊貴妃を殺したのです。

 

オリエンタル・ノート

1977年のことです。
イヴ・サンローランが〈オピウム〉という名前の香水を発売しました。
オリエンタル・ノートを全面に押し出した香水でした。
「オピウム」とは「阿片」のことです。
香水に、阿片などという麻薬の名前を付けたのです。
アメリカでは、なんという不道徳な名前だ、と猛烈な批判がわき起こりました。
中国では、輸入禁止の騒ぎとなりました。
第2次阿片戦争、とまでいわれたのです。

確かに、〈オピウム〉は、麻薬のように、濃艶、陶酔、絢爛豪華な香りです。
「もっとも類いまれな花々、豪華な飾り天井、奥深い光を放つ鏡たち、東洋の壮麗(ボードレール)」なのです。
〈オピウム〉は、世間的な批判を一蹴して、女性には絶大な支持を受けました。
東洋調の神秘を含んだ香りは、これまでにないもので、女性を虜にしたのです。

〈オピウム〉は、楊貴妃を彷彿とされるものがありますね。
〈オピウム〉以降、オリエンタル・ノートは大流行をしました。
いろいろなオリエンタル・ノートの香水が発売されました。

クリスチャン・ディオールは、〈デューン〉。
カルティエは、〈パルファム マスト ドゥ カルティエ〉。
シャネルは、〈ココ〉。
こうした香水が発売されたのです。
いずれも、甘くてセクシーな香りです。

 

挙体芳香のお話

西洋人には強い体臭があります。それだからこそ、香水が発達したのでしょう。
西洋人に比べると、日本や中国など、東洋人は、それほど、体臭が強くありません。

そして、西洋と東洋の中間地点には西域があります。
西域には、なぜか、香しい体臭を持つ人間がいるのです。
例えば、楊貴妃が、そういう体臭を持っていました。

また、香妃という、清朝時代の悲劇の女性がいます。
香妃は、西域のウイグル族の首長の后でした。
清朝の乾隆帝は、彼女のことを聞き、手に入れようとしました。
しかし、成功せず、香妃は自殺したのでした。
香妃については、次のようなコメントが残されています。
「香妃は、回部の王妃なり。姿色美し。生まれて体に異香あり、薫沐を仮らず(香妃の肖像画に書かれたコメント)」

人間には体臭があります。
中には、麝香のような匂いが出る人間もいるでしょう。
しかし、なぜ、西域の人間にそれが出るのかは、分かりません。

 

香りの分類

香りは、多種多様です。
甘い香り、セクシーな香り、フローラル・グリーン、シプレ・フルーティ、などなど。
これらをきちんと整理して、分類することはできないのでしょうか。
これまで、いろいろな人が、分類を試みてきました。
でも、香りは、嗅覚にたよるだけのものです。
直感的なものであり、簡単に整理できるものではありません。
分類自体が、多種多様なのです。

ここでは、オランダの調香師のポール・ジェリネックが整理した分類を紹介します。

先ず、分かりやすいように、地図の東西南北をイメージしてください。
そして:

 
 東の位置に[刺激的香り]、
 南の位置に[性感的香り]、
 西の位置に[麻酔的香り]、
 北の位置に[非感情的香り]、

 
を、それぞれ置きます。

 
東から南へ向かう香りは、次のようになります。

[刺激的香り]→(苔様)→(燃焦様)→(粉塵様)→(酸敗様)→(脂肪様)→(チーズ様)→[性感的香り]。

ここには、高揚感がある香りが並んでいるのです。

 
南から西へ向かう香りは、次のようになります。

[性感的香り]→(尿様)→(糞様)→(蜜蜂様)→(バルサム様)→[麻酔的香り]。

ここには、暑苦しい感じのある香りが並んでいるのです。

 
西から北へ向かう香りは、次のようになります。

[麻酔的香り]→(花様)→(果実様)→(水様)→(緑様)→[非感情的香り]。

ここには、鎮静的な感じのある香りが並んでいるのです。

 
北から東へ向かう香りは、次のようになります。

[非感情的香り]→(樹脂様)→(樟脳様)→(ミント様)→(スパイス様)→(木様)→(薬草様)→[刺激的香り]。

ここには、新鮮味のある香りが並んでいるのです。

この分類に、いろいろな香水を当てはめてみるのも、センスを磨く練習になるかもしれません。

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